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資産・負債会計Ⅰ その1(現金と預金)

1.現金・預金とは

簿記上の意味では、取引の手段として使われる通貨やその同等物。

2.現金の範囲

通貨のほか、他人振出しの小切手、公社債利札、郵便為替証書など、金融機関に提示して通貨と交換できるもの(通貨代用証券という)も現金に含む。自社振出しの小切手を受け取った場合、当座預金減少の取り消しとして処理する。

3.用語の整理

小切手
当座預金の引出しに使う証券。
振出し
手形や小切手に金額などを記入し、相手に渡すこと。
公社債
国や自治体が資金調達のために発行する証券(公債)。企業が資金調達のために発行する証券(社債)。
利札
公社債の証券についているこまごまとした紙片。期日を過ぎたものを金融機関に提示すると利息が受け取れる。
郵便為替証書
通貨代用証券
金融機関に提示して通貨と交換できる証券。他人振出しの小切手、郵便為替証書など。
定額資金前渡法(インプレスト・システム)
小口現金の管理の方法。一定額を一定期間の始めに担当者に前渡しし、その期間の終了後に担当者からの支払い報告に基づいて仕訳し、使った金額だけ補給する。

4.新出勘定科目

資産

(普通、当座、定期)預金~銀行
同じ種類の預金が複数の金融機関にあり、金融機関ごとに管理したいときに使う勘定。
定期預金
一定期間払い戻してもらうことはできないが、利率が高い預金。
小口現金
少額の現金を担当者に預け、日常発生する細かい支払いをその担当者に委任する際の少額の現金。

負債

当座借越
残高を超えて小切手を振出した際に金融機関から一時的に借り入れた金額。決算時のみに使う勘定。

収益

雑益
現金の帳簿上の金額に対する過剰額で、原因が判明しなかったもの。

費用

水道光熱費
光熱費の支払いを記録する勘定。
旅費交通費
従業員の出張などに使う交通費や宿泊費など。
通信費
電話や郵便の料金。
消耗品費
事務用品などに対する出費
雑費
3級の試験ではお茶菓子代、新聞代が該当する、ほかのどの勘定も適切でない場合に使用する。
雑損
現金の帳簿上の金額に対する不足額で、原因が判明しなかったもの。

その他

現金過不足
定期的に現金の実際残高を確認するが、その際に帳簿有高と実際有高が異なるときの差額の原因が判明するまで記録しておく勘定。

5.重要な仕訳

預金小口現金現金過不足

口座開設

当座預金口座を開設し、現金を30万円預けた。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
当座預金300,000現金300,000

小口現金の委任

日常の細かい支払いを目的に、担当者に現金を1万円預けた。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
小口現金10,000現金10,000

現金過不足の発生(過剰)

月末に金庫の現金を確認したところ、帳簿上54万円に対して、実際には55万円あった。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金10,000現金過不足10,000

定期預金新規契約

普通預金200万円を定期預金に振り替えた。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
定期預金2,000,000普通預金2,000,000

支払い報告

今週の小口現金による支払いは以下のとおりである。
旅費交通費 3,000円、消耗品費 2,000円、通信費 800円、雑費 1,000円
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
旅費交通費
消耗品費
通信費
雑費
3,000
2,000
800
1,000
小口現金6,800

過剰の原因の判明

1万円の現金過剰の原因のうち、8,000円は売掛金の回収の未記帳であることが判明した。残額の原因は決算までに判明しなかった。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金過不足10,000売掛金
雑益
8,000
2,000

複数の預金口座

現金をA銀行の普通預金口座に20万円、B銀行の普通預金口座に30万円預けた。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
普通預金A銀行
普通預金B銀行
200,000
300,000
現金500,000

小口現金の補給

小口現金による支出額6,800円と同額を小切手を振り出して補給した。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
小口現金6,800当座預金6,800

現金過不足の発生(不足)

金庫の内容を実査したところ、帳簿上の金額に対して2万円の不足だった。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金過不足20,000現金20,00

小切手の振出し

電気代3万円を、小切手を振り出して支払った。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
水道光熱費30,000当座預金30,000

小口現金を報告と同時に補給する場合

小口現金の担当者から以下のとおりに報告を受け、同額の小切手を振り出して補給した。
旅費交通費 3,000円、消耗品費 2,000円、通信費 800円、雑費 1,000円
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
旅費交通費
消耗品費
通信費
雑費
3,000
2,000
800
1,000
当座預金6,800

不足の原因の判明

2万円の借方残高である現金過不足の原因は、光熱費の支払い16,000円の未記帳であることが判明した。残額については不明なため、適切な勘定に振り替える。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
水道光熱費
雑損
16,000
4,000
現金過不足20,000

他社振出しの小切手の受け入れ

売掛金20万円の回収で、同額の先方振出しの小切手を受け取った。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
現金200,000売掛金200,000

6.仕訳のポイント

何が現金として計上されるのか押さえておく。特に、小切手は自社振出しとそれ以外の振出しでは処理が異なる。

7.課題

  1. 次の取引を仕訳せよ。
    1. 当座預金口座に現金40万円を預け入れた。
    2. 500万円を普通預金口座から定期預金口座に振り替えた。
    3. 60万円をC銀行普通預金口座からD信用金庫普通預金口座に預け替えた。
    4. 買掛金30万円を小切手を振り出して支払った。
    5. 得意先に対する売掛金20万円を以前、自社が振り出した小切手で受け取った。
    6. 決算において、当座預金勘定が10万円の貸方残高なので、適切な勘定に振り替えた。
  1. 次の取引を仕訳せよ。(続き)
    1. 小口現金の担当者から以下の報告を受け、ただちに小切手により補給した。
      通信費 3000円、旅費交通費 2000円、雑費 600円
    2. 金庫を実査したところ、3,000円の不足が判明した。
    3. 決算で、h.の原因を調査したところ、売掛金の現金による回収額3万円と光熱費の現金による支払い3万2000円の未記帳が判明した。現金過不足の残高は適切な勘定に振り替えた。

自社振出しの小切手の受け入れ

売掛金20万円の回収で、同額の自社振出しの小切手を受け取った。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
当座預金200,000売掛金200,000

当座借越額の振替

当座預金勘定が20万円の貸方残高なので、決算において、適切な勘定に振り替えた。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
当座預金200,000当座借越200,000