本館>保管庫TOP>日商簿記3級>純資産会計(利益の配当)

純資産会計 その2(利益の配当)

1.配当とは

会社が営業によって得た利益を出資者(=株主)に還元すること。
会社の利益はいったん、繰越利益剰余金という勘定で計算され、保有する株式数に応じて配当として支払われる。
配当の金額は株主総会の決議によって行われる。

2.配当時の注意

株主に配当を行う際、資本金の金額の4分の1に達するまで配当金の総額の10分の1の金額を準備金として留保しなければならない。
利益のすべてを配当してしまうと、会社が事業を拡大できないため。
また、損失が発生した場合に資本金を取り崩す(=資本の欠損)ことを防ぐ役割もある。

3.用語の整理

配当
会社が営業によって得た利益を、株式数に応じて株主に還元すること。
利益
収益から費用を差し引いたもの。使い道の決まっていない利益が積みあがった金額が繰越利益剰余金勘定で計算される。
準備金
会社が損失(収益<費用)を出したときに備えて留保しておく利益。事業拡大の原資にもなる。
留保金の性格によって資本準備金と利益準備金に分かれる。

4.新出勘定科目

負債

未払配当金
株主総会の決議によって決定した支払うべき配当金。

純資産

利益準備金
利益の配当の際に積立てておき、事業拡大の原資となったり、将来の損失に備える金額。
繰越利益剰余金
過去の利益の積み上げであり、処分(株主への配当や他の純資産勘定への振替)していないもの。

5.重要な仕訳

配当の決定

株主総会での決議により、繰越利益剰余金から100万円の配当が決定した。なお、資本金1億円に対して、利益準備金の残高が500万円ある。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
繰越利益剰余金1,100,000未払配当金
利益準備金
1,000,000
100,000

配当の決定(準備金の積み立てが上限に達した場合)

株主総会での決議により、繰越利益剰余金から100万円の配当が決定した。なお、資本金1億円に対して、利益準備金の残高が2,495万円ある。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
繰越利益剰余金1,050,000未払配当金
利益準備金
1,000,000
50,000

配当金の支払い

配当金100万円を当座預金から支払った。
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
未払配当金1,000,000当座預金1,000,000

6.仕訳のポイント

会社法では純資産の額が300万円以上でないと利益を配当できないことになっているが、簡単のため、それ以下の金額になっている場合もある。
準備金の積み立ての額の計算は2級以上の範囲。3級では積み立てる金額が提示される。

7.課題

  1. 次の取引を仕訳せよ。
    1. 株主総会の決議により、繰越利益剰余金から200万円の配当と、20万円の利益準備金への積み立てが決定した。
    2. 配当金50万円を当座預金から支払った。
  2. 自分の好きな企業の純利益と配当金を調べ、純利益の何%が配当されているか計算せよ。(配当性向という)
  3. 前項と同じ企業の株主資本と配当金を調べ、株主は配当を受け取ることにより何年で投資を回収できるか計算せよ。